かつては「転職35歳限界説」がまことしやかにささやかれていたものだが、現代ではもう古い話になってきている。
2月中旬にヤフーニュース経済欄に掲載された以下の記事によると、40~50代を中心とした中高年世代の転職は年々増加傾向にあり、転職者全体に占める割合も上昇しているという。
こういった状況は実際のデータにも現れており、総務省が出している労働力調査によると、転職者数に占める45歳以上の割合は2012年の約31%から21年には約40%に増加。またリクルート社が昨年実施したアンケート調査では、40代の約半数、50代でも約4割が転職の意向を示す回答をしたとのことだ。
40~50代の転職が難しい理由
こういったニュースがようやく出るようになったとはいえ、まだまだ日本では40~50代の転職は少数派。
なぜこの世代の転職が難しいかというと、シンプルに「そもそも求人がないから」というのが理由だ。
「この世代の求職者自体は大勢います。ただ、企業側に受け入れ余地が今のところないんですよね。」
上記は、ある人材紹介企業の経営者の方から伺った話。実際のところ、これまで日本では長期雇用が普通だった背景があり、多くの40~50代にとっては転職は未知数。
受け入れ側としても、転職未経験のミドルエイジが職場になじんでくれるかどうかわからない、と不安に思って求人を出すことを尻込みしてしまうのではないだろうか。
労働移動を促進する政府方針がミドルエイジの転職にどう影響するか
とはいえ、国際的な流れや日本政府の動きは世代問わず労働移動を後押しする方向で動いている。
以前のコラムで紹介した岸田首相の話では、6月までに発表予定の政府方針の中で、転職を後押しするために失業給付の受け取り猶予期間の短縮が検討されている。
朝日新聞デジタル「失業給付の受け取り、2カ月から短縮を検討 首相明言、転職を後押し」
これは、ミドルエイジ世代にとってはとくに朗報である。
家族を養う必要のある同世代の多くの人にとって、猶予期間の2カ月は大きくない負担だ。この期間が短くなるとすれば、他の世代以上に転職が加速しても不思議はない。
40~50代の人材紹介で重要になる要素
では、立場を変えて人材紹介会社の視点でこの動きへの対応を考えてみる。
40~50代の転職促進は、紹介企業にとっては市場拡大と同義であり大きなビジネスチャンスだ。
ただし、待っているだけで求人が降ってくるわけではないので、そこは企業担当のRA側が求人を生み出す動きをする必要が出てくる。
たとえば、RA側から企業サイドへ行いたいアプローチとしては以下のようなところ。
考えられるアプローチ
- 採用課題に対して、40~50代でも業務上対応可能であることを提示する
- 新しい職場への適応能力を判断するた基準を設ける
- 管理職以外のポストでの採用検討を促す
とくに3つ目に関して、日本企業にとってはなじみがないが、海外企業であればごく一般的。
「ジョブ型雇用のような形であれば、管理職以外のポジションをミドルエイジ向けに開放することも可能」という考え方を、企業の採用担当者に納得させられるかが重要だ。
こういったビジネス的なアプローチのアドバイスも、VINCEREのCS(カスタマーサクセス)では定期・不定期のmtgの中で実施している。