前回のブログでは履歴書スクリーニングのシステムの実装を検討したのですが、少々大がかりすぎて中小規模の人材紹介企業に当てはめるのが難しいかなと思ったところもあり、今回はあまり規模関係なく使えるChatGPTの運用法になります。
業務改善にも色々ありますが、今回は私がとくにChatGPTの利用で効果をレバレッジできると考えている「RA・CA個人が抱える業務課題の改善スキーム構築」を詳しく検討したいと思います。
例えばキャリアアドバイザー、転職エージェントの仕事の中で、求職者の志望動機や職務経歴書の添削のような業務があると思います。
そういった細かい業務レベルでも、当然ながら担当ごとに能力の差はあって、それがひいては成約率の差に影響してくるでしょう。
そういったKGIに影響するいくつかの課題について、通常であれば例えばRA/CA個人の努力や、またはマネージャーとの対話の中でトライ&エラーを繰り返して徐々に修正・向上するのが一般的かと思います。
今回のブログで取り組むのは、そこのトライ&エラーの初手の壁打ち相手をChatGPTに依頼する。さらにその壁打ちをベースにマネジメントレイヤーと相談しながら改善していく。そしてそのスキームを組織の業務に落とし込むところまで考えるのが全体のスコープです。
適切な質問さえきっちり投げかければ的を得た回答を返してくれるChatGPTですので、上手く仕組化することで各RA/CAのアクションの質が上がり、スキルも向上、引いては組織全体の生産性アップに繋がるのではないか、と思っています。
01. 業務リスト作成とブラッシュアップ
では、どういう使い方をすれば営業さんのスキルが改善するのか、
そして、それを組織業務の一環として定着させるにはどうすればいいか。
そのような業務改善の難しい部分も、例によってChatGPTの力を借りながら検討・構築していきます。
まず、以下のような業務上課題が発生するポイントを列挙します。(これは自力で考えました。ここからChatGPTに出してもらってもいいです)
- ・志望動機、職務経歴書の添削
- ・オファーレターの作成・改善
・フィードバックレターの作成・改善 ・特定の求人に対する求職者マッチング案のブレインストーミング ・特定の求職者に対する求人マッチング案のブレインストーミング ・候補者との対話の中で態度変容を促すテクニック
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続いて、このリストをChatGPTを使ってブラッシュアップしましょう。
プロンプトは以下。
【以下は、私が考えた「人材紹介企業において営業の生産性に影響すると思われる項目のリスト」です。これ以外に、生産性への影響が大きいと思われるポイントがあればアドバイスをお願いします。】
ChatGPTの回答がこちら。
- リストに挙げられた項目はすでに多くの要素を網羅していますが、
以下にいくつかの追加的なポイントを提案します。
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- 顧客対応スキルの向上:
営業担当者が顧客と円滑にコミュニケーションを取るためのスキルを磨くことで、信頼関係を構築しやすくなり、生産性が向上する可能性があります。
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- データ分析能力の強化:
人材紹介業界においても、データを活用して候補者と求人のマッチングを効率的に行うことが重要です。営業担当者がデータ分析スキルを身につけることで、生産性の向上が期待できます。
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- 時間管理の最適化:
営業担当者が効率的に仕事を進めるためには、時間管理が欠かせません。自分の時間を最適に使い、優先順位をつけることで生産性が向上するでしょう。
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- ネットワーキング能力の向上:
営業担当者が広い人脈を持つことで、新しいビジネスチャンスを見つけやすくなり、生産性が向上する可能性があります。効果的なネットワーキング方法を身につけることが重要です。
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- 継続的な研修・教育:
営業担当者が業界の最新情報やトレンドを把握するために、定期的な研修や教育を受けることが重要です。これにより、生産性の向上につながるでしょう。
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良い感じの答えが返ってきたので、課題リストに組み込みながら続けます。
02. 課題改善を阻害する要素の特定と質問文の作成
続いて、これらのポイントに対して、下部の必要情報を入力した上で、以下のプロンプトを投げます。
【リストアップした業務を改善していくにあたって、一般的に改善を阻害すると思われる課題と、その解決策を得るにあたって上司に相談する際の質問文を作成してください。】
ChatGPTの回答がこちら。
- 志望動機、職務経歴書の添削
課題: 添削の基準や指針が明確でないこと 質問1: どのような観点や基準を持って志望動機や職務経歴書の添削を行うべきですか? 質問2: 他部署との協力やリソースが必要な場合、どのように連携を取りながら添削作業を進めるべきでしょうか?
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- オファーレターの作成・改善
課題: 書式や内容の統一性がないこと 質問1: オファーレターに統一された書式や内容を導入するにはどのように進めるべきでしょうか? 質問2: オファーレター改善の効果を定量的に評価する方法はありますか?
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- フィードバックレターの作成・改善
課題: フィードバックの質が一定でないこと 質問1: フィードバックレターの質を向上させるために、どのような研修やサポートが提供されていますか? 質問2: フィードバックの効果を測定する方法はありますか?
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- 特定の求人に対する求職者マッチング案のブレインストーミング
課題: ブレインストーミングの効果が限定的な場合 質問1: 効果的なブレインストーミング手法やテクニックを導入するためにはどのような取り組みが推奨されていますか? 質問2: ブレインストーミングの成果を評価・共有する方法はありますか?
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- 特定の求職者に対する求人マッチング案のブレインストーミング
課題: データ活用の限界 質問1: データ分析を活用して効果的な求人マッチングを行うために、どのようなデータや分析手法が推奨されていますか? 質問2: データ分析以外のアプローチでマッチングの質を向上させる方法はありますか?
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- 候補者との対話の中で態度変容を促すテクニック
課題: 効果的なコミュニケーションスキルの欠如 質問1: 候補者の態度変容を促すコミュニケーションスキルやテクニックを学ぶための研修や資料はありますか? 質問2: 態度変容を促す際の成功事例やベストプラクティスを共有していただけますか?
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- 顧客対応スキルの向上
課題: 顧客対応スキルが不十分 質問1: 顧客対応スキルを向上させるための研修や資料がありますか? 質問2: 顧客対応スキル向上に役立つベストプラクティスや成功事例を共有していただけますか?
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- データ分析能力の強化
課題: データ分析スキルが不足している 質問1: データ分析能力を強化するための研修や教材がありますか? 質問2: 効果的なデータ分析手法やツールを取り入れるための推奨事項は何ですか?
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- 時間管理の最適化
課題: 時間管理がうまくできない 質問1: 時間管理を最適化するためのツールや方法を教えていただけますか? 質問2: 効率的なタスク管理や優先順位付けの方法についてアドバイスをいただけますか?
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- ネットワーキング能力の向上
課題: ネットワーキングスキルが不足している 質問1: ネットワーキング能力を向上させるための研修や資料がありますか? 質問2: 効果的なネットワーキングの方法や成功事例を共有していただけますか?
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- 継続的な研修・教育
課題: 継続的なスキル向上が難しい 質問1: 従業員の継続的な研修・教育を実現するための取り組みや制度がありますか? 質問2: 他部署や企業で成功している継続的な研修・教育の事例を教えていただけますか?
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いくつかの課題と質問文がでてきました。
そもそも、「顧客対応スキル」などの項目はもっと細分化して考えるべきですが、いったん全体像を理解する上ではこの粒度感でよいかなと思います(深ぼるときもとにかくChatGPTは使えます)
ところで大前提の話なのですが、「なぜ上司への質問文を作成させるプロンプトにしたのか」と思った方もおられるかもしれません。簡単に説明します。
ここには私の考えが含まれますが、今回の業務改善施策において重要なのは【営業さんがChatGPTと対話で課題の解像度を上げたうえで、さらにマネージャーとのやり取りも通じて課題の改善を達成すること】です。
なぜなら、営業さんごとの個別解決には個人差があるので、組織として平均的に底上げをするにはコミュニケーションを通じた平準化が必要不可欠だからです。
そういった観点で、例えば上記の課題・質問リスト使いつつ、以下のようなやり取りを踏まえて業務改善のPDCAサイクルを回すと良いのではないでしょうか。
- 【前提】
営業チーム構成:マネージャー1名、営業5名 週次MTG:全体の案件進捗の共有 1on1MTG:個別の進捗報告、各種相談
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- 【能力改善サイクル】
1on1MTGの中で各営業のスキル向上を図るために、上記のプロンプトで作成した質問を使いながらやり取りをします。
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- 【改善スキーム・1on1の運用】
1週目の1on1MTG: リスト化した課題の確認と、どこに苦手意識があるかの把握(上司とRA/CAの方が共通認識を作ることが大事)
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- 2週目の1on1MTGまで:
日常業務の中での課題ポイントの確認と、プロンプトを使った質問文の作成 (優秀な営業は、この時点で自分の課題を特定して改善策まで作ってしまいそう)
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- 2週目の1on1MTG:
プロンプトで作成した質問を上司へ話すことを通じた壁打ち。解決策の同意
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- 3週目の1on1MTGまで:
解決策の実際の業務での実行。チャレンジ。課題の再確認(以降「2週目の1on1MTGまで」に戻って繰り返す)
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03. まとめ
今回は「RA・CA個人の業務課題の改善スキーム構築」を検討しました。
前回と少し毛色の違う内容でしたが、いかがだったでしょうか?
次回のブログでは、より現場のニーズに即した業務改善案の検討に取り組みます。
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