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【HRトレンド】人材システムの自動連携(ATS・候補者集客サービス)におけるグローバルと日本の地域差

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Wantedlyによる新ATS「Wantedly Hire」のリリースが先日発表されました。
リリースにはいくつか興味深い点がありましたが、特に「APIの提供」について言及されている点は非常に重要です。機能の詳細は未知数ですが、もし多くのデータ項目においてAPIが解放された場合、日本の採用人事および採用マーケットにおいて小さくない影響があるのではと考えています。

「Wantedly Hire」サービスサイト
https://hire.wantedly.com/

仲CEOブログ「4年ぶりの大型リリースをします」
https://www.wantedly.com/companies/wantedly/post_articles/929751

今のところ、日本では採用人事におけるATSのAPI利用は非常に限定的です。とくにHRMOSを始めとしたベンチャー企業が開発しているATSにおいても、API機能の公開はあまりされておらず、一部サービスとの外部連携が搭載されている程度です(2024年10月時点)。一方、日本と比べてアメリカや欧州、東南アジアなどの国々では、企業の採用プロセスにおいてATSと外部サービスとの連携は日常的に行われています。つまり、もし「Wantedly Hire」のようなAPI連携のしやすいATSが主流となれば、日本の採用マーケットもグローバルと同じ状態に近づいていく可能性があります。

今回のブログでは、国や地域ごとの特徴と日本との主な違いについて説明しながら、今後日本の採用市場がどのような方向で変化していくのか、ChatGPTによる情報と弊社のグローバル市場における実地の知見を含めて解説していきます。

 

 

各地域ごとのATS、および候補者集客プラットフォームの状況

 

まずは各地域ごとにどのような観点でATSと他サービスが連携されているか、その概観を見てみます。

アメリカの場合
アメリカの企業では、採用プロセスの効率化と候補者体験の向上を目的として、多くのATSが日本でいうビズリーチのような候補者集客サイトやLinkedInなどのソーシャルメディアプラットフォームと広範囲にわたって統合されています。特に大企業やテクノロジー業界を中心に、これらのツールは候補者の追跡、評価、そしてコミュニケーションを一元化するために活用されています。また、ソフトウェア開発者の採用など特定の職種では、GitHubやStack Overflowとの連携も見られます。

ヨーロッパの場合
ヨーロッパでは、個人情報保護規則(GDPR)による厳格なデータ保護要件のもと、ATSの運用が行われています。このため、プライバシーを尊重しつつも、効率的な候補者管理を実現するために、ATSと外部サービスとの連携は慎重に行われています。LinkedInなどのプラットフォームとは連携しているものの、その範囲や深さには各国の法規制が影響しています。

東南アジアの場合
東南アジアでは、経済の急成長とともに、新興企業やスタートアップが多く誕生しており、これらの企業では最新の採用技術が積極的に導入されています。特に、シンガポールやマレーシアのような国々では、多国籍企業が地域のハブとして機能しており、グローバルな採用プラットフォームとの連携が一般的です。これにより、地域全体での人材流動が促進されています。

日本の場合
日本では、企業文化やプライバシーに対する考慮、法規制の違いから、ATSと外部サービスとの連携が欧米や東南アジアほど積極的ではありません。また、日本国内の候補者集客サイトや業界特有のネットワーキングの慣習が、ATSの機能や利用の仕方にも影響を与えています。しかし、グローバル化の進展や国内市場の競争の激化に伴い、日本の企業も徐々に外部サービスとの連携を強化している傾向にあります。

 

これらの違いを考えると、日本・グローバルを大まかに二分するだけでは不十分で、各国・各地域によって法制や経済状況の違いを背景に採用人事やATSに関連する連携の状況が違うことがわかります。とはいえ、中でも日本はそれぞれの地域と比較して規制や考慮すべき要素の多い国であることは確かでしょう。

 

各地域でよく利用されるATS、候補者集客プラットフォーム

 

続いて、アメリカ、ヨーロッパ、東南アジアにおける主要なATSと候補者集客プラットフォームを列挙します。

アメリカの場合
【ATS】
Workday: ERPシステムを含む広範な機能を持つATSで、特に大企業に人気です。
Taleo: オラクル社提供のATSで、多国籍企業に広く採用されています。
Greenhouse: スタートアップから中堅企業まで幅広く利用される、使いやすさが魅力のATSです。

【候補者集客プラットフォーム】
LinkedIn: 最も利用されているジネスマン向けのソーシャルメディアであり、採用活動にも広く用いられています。
Indeed: ジョブリスティングと会社レビューが特徴のプラットフォームで、多くのATSと直接連携しています。

ヨーロッパの場合
【ATS】
SAP SuccessFactors: 多国籍企業向けに設計されており、厳格なデータプライバシー規制に対応しています。
BambooHR: 中小企業向けのシンプルで効率的なATSです。

【候補者集客プラットフォーム】
XING: ドイツを中心に利用されているビジネスネットワークで、地域に根差した採用に有効です。
StepStone: ヨーロッパ全域で広く使われる求人サイトです。

東南アジアの場合
【ATS】
JobStreet: 東南アジア全域で利用されている採用管理ツールです。
SmartRecruiters: 多機能で、特に地域のスタートアップや急成長中の企業に選ばれています。

【候補者集客プラットフォーム】
JobsDB: 東南アジア諸国で広範囲にわたり利用される求人サイトです。
LinkedIn: 東南アジアでも国際的なプロフェッショナルの獲得に広く利用されています。

 

注目したいポイントはLinkedInの活用状況です。上記のリストにおいてはアメリカと東南アジアで広く使われていることがわかりますが、欧米において拠点を持っている弊社の視点から見ると、ヨーロッパでもLinkedInは十分に広まり活用されています。

以前の記事に記載した通り、今後は日本でもLinkedInのユーザーの更なる増加が見込まれることを考えると、日本とグローバルの採用市場の一体化の流れが来る可能性はかなり高く、ATSにおいてもLinkedInとの連携が可能かどうかという観点が非常に重要にになってくるかもしれません。

人材紹介企業がLinkedInを効果的に活用する場合、CRMによる候補者情報の中長期的な管理が非常に有効です。LinkedIn連携機能を持った日本国内唯一のCRM「Vincere」にご興味のある方は、ぜひ以下リンク先よりお問い合わせください。

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 グローバルにおけるATS・候補者集客プラットフォーム間の具体的な連携施策

 

では実際に、上記のようなATSと候補者集客プラットフォームではAPIを介してどのような連携がされているのでしょうか。Workday、SAP SuccessFactorsのようなATSとLinkedInやIndeedのような候補者集客プラットフォームとの連携について、また欧米での自動化された集客アクションについて説明します。

ATSと候補者集客プラットフォームの連携
採用人事側のATSと候補者側のプラットフォームをITシステムでつなぐ連携はシンプルながらDX施策として非常に有効です。以下は基本的な施策についての解説になります。

  1.  求人投稿の自動化
    欧米においてはATSから直接LinkedIn、Indeedなどのプラットフォームに求人を投稿する連携が一般的です。企業はATS内で求人情報を一元管理し、それを複数の求人媒体やソーシャルメディア・SNSに自動的に配信することができます。これにより、手作業によるエラーを減少させ、リーチの拡大と効率化が可能になります。
  2.  候補者データの収集と同期
    応募者がLinkedInやIndeedから応募すると、その情報はATSに自動的に転送され、候補者のプロファイルがATS内で一元管理されます。これにより、採用担当者は候補者の情報を迅速に確認し、選考プロセスをすばやく進めることができます。
  3.  採用フローの最適化
    ATSと候補者集客プラットフォームが連携することで、応募者の選考状況をリアルタイムで追跡し、各ステップでの応募者とのコミュニケーションを自動化することが可能になります。たとえば、面接のスケジューリング自動化、選考結果の通知、オファーレターの送信などをATSを介して行うことで、迅速なやり取りやデータの収集を行うことができ、それを更に後の採用活動に活かすことも可能です。

 

候補者に対する自動的・定期的な集客アクション
日本ではあまりなじみがないかもしれませんが、欧米ではマーケティングオートメーション(MA)技術を活用した採用活動が一般的です。特に、LinkedInなどのプラットフォームを通じて、以下のような自動的な集客活動が行われています。

  1. ターゲティング広告
    企業は候補者のスキル、経験、興味に基づいてパーソナライズされた広告を展開し、特定の職種やキャリアレベルの候補者をターゲットにします。これにより、適切な候補者に直接アプローチすることが可能です。
  2. DM・ダイレクトリクルーティング
    ATSに蓄積したタレントプールに対して、定期的に企業の新しい情報やニュースレター、業界のトレンドに関する情報を提供するコンテンツを自動的に送信します。これは、候補者との関係を築き、関心を持続させるのに有効です。また、これらのやり取りを踏まえてリアクションの良かったユーザーへダイレクトにスカウトを打つことも検討できます。
  3. 過去候補者の掘り起こし・リターゲティング
    一度興味を示したが途中で選考から離れた候補者に対して、再び関心を引くような内容を配信する掘り起こし施策が行われています。これにより、潜在的に自社へ採用できる可能性のある候補者と中長期でリレーションを構築し、母集団形成を有効に進めることができます。

 

このように、欧米ではATSと候補者集客プラットフォームの統合により、効率的かつ効果的な採用活動が行われています。候補者に対する定期的で自動的なアプローチは、採用プロセス全体の品質と速度を大きく向上させる要因となっています。

 

まとめ:人材紹介企業はこの状況の変化にどう対応すべきか

 

こういったATSと候補者集客プラットフォームの連携、および状況の変化は人材紹介企業へどのような影響を与えるでしょうか。

まず第一に、企業と候補者の距離が近くなることでダイレクトリクルーティングの市場が大きくなります。それはつまり候補者と企業の仲介者としての人材紹介企業の価値が問われるということでもあるため、人材紹介企業にとって良いことばかりではありません。

ただし、一概に悪いことばかりではないでしょう。候補者プラットフォームに存在する人の数が増えるほど、母集団も増えるため企業は良い候補者をピックアップすることが難しくなり、採用人事のリソースでは捌ききれない量の候補者を抱えることになります。そこで人材紹介企業が独自のノウハウで優秀な候補者を高い確度でピックアップ・紹介できれば、企業にとっての提供価値は大きいものとなります。また、今後グローバルな人材の移動が活発になれば、そういった環境で実績を上げてきた人材紹介企業のニーズは増えることになるでしょう。

前提として、ATSの利用動向は採用人事の対面にいる人材紹介企業にとっても重要な情報です。今後のこういった動きを欠かさずチェックすることが、人材紹介企業としての提供価値を高める上で大切になってくるかと思います。

 

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